研究課題
基盤研究(B)
我々は前年度より引き続いてHigh-mobility-group protein A(HMGA)ファミリーが心筋分化において果たす分子的役割について研究した。HMGAファミリーはDNA上のA/Tに富む部位を認識してクロマチン構造を変化させ、さらに他の転写因子と会合して複合体を形成することによって遺伝子の発現を制御する転写因子である。心筋分化のモデル細胞であるP19CL6細胞にHMGA2を恒常的に過剰発現させると、元来の細胞よりも高い心筋分化能を呈した。一方、その変異体を過剰発現する細胞株では心筋分化が著しく抑制され、HMGA2のsiRNAを導入した細胞でも分化が抑制された。また心筋転写因子Csx/Nkx2-5のプロモータ上の配列に対して、BMPシグナルに関与する転写因子SmadとHMGA2が複合体を形成して結合し、その転写活性化を相乗的に増強することがわかった。また生体におけるHMGA2の役割を調べるため、アフリカツメガエル胚にHMGA2を発現させたところ、心臓領域が拡大することが示された。さらに、ツメガエルにおけるHMGA2のホモログを同定し(XHMGA2)、これのmorpholino oligonucleotideを初期胚にインジェクションしたところ、心臓形成が有意に阻害された。これらのことから、生体においてもHMGA2が心臓の形成に促進的に働くという、必須の役割を担うことが示唆された。我々は一方で、将来の心筋細胞移植の臨床応用に必要とされる組織保存の技術の革新を図るための研究を行った。最近開発された、氷点下で非凍結状態を維持できる過冷却技術を用いて、ラットから切除された臓器移植片の保存状態を調べた。結果、通常の冷却保存と比較して、保存液中に漏出する生化学マーカー値の減少や組織像の改善が有意に認められ、過冷却保存において安定した長期保存が維持できる可能性が示された。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (6件)
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