研究課題
細胞の増殖には、細胞周期が回ることが必須であるが、心筋細胞は生後すぐに増殖能を失い、G1期からS期に移行できないため、増殖しないと考えられている。本研究の目的は、細胞周期促進因子cyclin D1を心筋細胞に導入することにより細胞周期を強制的に動かし、心筋細胞を増殖させ、それを新しい心筋の再生治療に応用することである。本研究の昨年度までの成果は以下の通りである。1)培養心筋細胞を用いた実験で、細胞周期促進因子cyclin D1が分化した心筋細胞では核内に移行せず細胞質にとどまっていることを見いだした。2)cyclin D1を核移行シグナル(Nuclear localizing signals=NLS)により強制的に核に移行させることにより、本来増殖能を持たない心筋細胞を増殖させることに成功した。3)ラットを用いた実験でも、心筋細胞における細胞周期がG2-M期に移行していることが確認された。4)そのメカニズムとしてp27が関与していることを示した。平成17年度は動物実験としてラット心筋梗塞-心不全モデルを用いて、cyclin D1-NLSアデノウィルスベクターにより心不全が改善できるか検討を行った。このモデルではラットの冠状動脈を結紮することにより心筋梗塞を作成、結紮手術時に梗塞部にcyclin D1-NLSアデノウィルスを導入し、心臓超音波検査などにより心不全の評価を行った。本研究の結果は新しい心筋再生治療への道を拓くものと考えられる。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (2件)
J Mol Cell Cardiol. 38
ページ: 163-174
J.Biol.Chem. 280
ページ: 5626-5635