研究課題
基盤研究(B)
本研究では、インスリン・シグナル伝達経路を標的とした新しい心不全治療を開発するため、種々の心肥大・心不全モデルにおけるPhosphoinositide 3-kinase (PI3K)、またはmTOR (mammalian Target of Rapamycin)の役割を検討した。1.自己免疫性心筋炎モデルにおけるラバマイシンの効果心筋ミオシンをLewisラットに免疫し自己免疫性心筋炎を発症させた。このモデルにラバマイシン(2mg/kg/day)を投与した。ラバマイシンはラットの死亡率を有意に減少させた。ラバマイシンは心筋炎に伴う心重量の増加を抑制し、心筋組織の炎症細胞浸潤と線維化を抑制した。心臓超音波検査にてラバマイシン非投与群では心拡大と心筋収縮力の低下がみられたが、ラバマイシン投与は心機能を改善した。2.甲状腺ホルモンによる心肥大におけるPI3KとmTORの役割甲状腺機能亢進症は心肥大や心不全の原因となる。マウスに甲状腺ホルモンを2週間投与すると心重量は27%増加した。PI3Kの活性を阻害するdominant-negative PI3Kを心筋特異的に発現したトランスジェニックマウスに甲状腺ホルモンを投与した場合の心重量の増加は、9%であった。また、野生型マウスに甲状腺ホルモンを投与すると心重量は27%増加したが、ラバマイシンを同時に投与することにより心重量の増加は9%に抑えられた。3.心臓の成長過程においてmTORにより制御される遺伝子群の同定生後1週令の新生児マウスにラバマイシンまたは溶媒を1週間腹腔内注射し心臓よりRNAを抽出しDNAチップを行うことにより、生理的な心臓の成長過程においてラバマイシンにより発現が制御されている遺伝子を同定した。ラバマイシン投与群ではcyclin B3、eukaryotic translation initiation factor 3、stormal cell derived factor (SDF) 2 like proteinなどの遺伝子の発現量が減少し、growth arrest specific gene 8、c-myc binding protein、autophagy 12-like proteinなどの遺伝子発現が増加していた。ラバマイシンによるmTORの活性の抑制により、圧負荷、心筋炎、甲状腺ホルモンによる心肥大と心拡大を有意に軽減することができた。よってラバマイシンは心不全治療薬として使用される可能性がある。
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