研究概要 |
【目的】骨髄単核球移植による血管新生効果が臨床的にも確立されている。内皮系幹細胞の関与が大きいが新生血管内皮に集積する細胞起源は明らかでない。骨髄由来単球系幹細胞の内皮細胞分化の可能性とバルーン傷害血管での内皮再生による内膜肥厚の抑制効果を検討する。 【方法】骨髄由来単球系幹細胞はCD14陽性細胞をソートして採取しVEGF存在下で培養し、造血系細胞マーカー、内皮系マーカー、間葉系マーカー抗体にて免疫染色行い分化誘導を検討した。ヌードラット頸動脈をバルーン傷害して内膜肥厚モデルを作製し、直後にPKH2-GL蛍光染色したヒト骨髄由来CD14陽性細胞を動脈内に投与した。 【結果および考察】VEGF存在下で培養された骨髄由来CD14陽性細胞はVEGF存在下で造血系細胞マーカー(CD14,CD45,CD11b)を失い、内皮系マーカー(Tie2,CD34,Flk)出現が観察された。間葉系マーカーは陰性であった。バルーン傷害後に移植された骨髄CD14陽性細胞は傷害部位にMCP-1依存性に接着し、内膜肥厚を完全に抑制した。末梢血由来CD14陽性細胞では接着は観察されなかった。接着した骨髄CD14陽性細胞は造血系細胞マーカー(CD14,CD45,CD11b)を失い、内皮系マーカー(vWF, eNOS)を発現していた。再生内皮はエバンスブルーの侵出が抑制され、アセチルコリン依存性の拡張を示した。HUVECを用いたflow assayではMCP-1で刺激された骨髄CD14陽性細胞が明らかに高い接着能を示した。骨髄由来CD14陽性単球系幹細胞はbeta-integrin定常発現量が末梢血由来CD14陽性単球系細胞より著明に亢進していた。MCP-1により活性化beta-integrinが増加していた。CCR2発現は差がなかった。 【結論】骨髄由来単球系幹細胞は内皮前駆細胞への分化能を持ち、MCP-1依存性にバルーン傷害内膜に強固に接着した。内皮再生により内膜肥厚は抑制され再狭窄も阻止された。PTCA後の内皮再生を目的とした細胞治療に応用可能と考えられた。
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