研究課題/領域番号 |
15390255
|
研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
上野 光 産業医科大学, 医学部, 教授 (50260378)
|
研究分担者 |
浅田 祐士郎 宮崎大学, 医学部, 教授 (70202588)
笹栗 靖之 産業医科大学, 医学部, 教授 (60140646)
武谷 浩之 産業医科大学, 医学部, 講師 (60222105)
西田 誉浩 九州大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (50284500)
|
キーワード | 血小板活性化因子水解酵素(PAF-AH) / 酸化LDL / 血栓 / 炎症 / 傷害 / 血管 / 遺伝子導入 / アデノウイルス |
研究概要 |
抗炎症・抗血栓分子群の傷害血管壁への局所遺伝子導入による病態解析を実施した。血小板活性化因子水解酵素(Platelet activating factor-acethylhydrolase:PAF-AH)の結果を詳述する。PAF-AHはPAFのみならず酸化LDLを含む炎症性脂質mediatorsをリソ体に分解する。PAF-AHを傷害血管壁に局所発現させると、血中のPAF-AH活性や脂質プロファイルには関係なく直接的な抗炎症・抗血栓作用が発揮されるのではないかとの仮説を検証した。低コレステロール動物であるウサギ頚動脈をバルーン傷害し、アデノウイルスを用いてPAF-AHを遺伝子導入した。傷害7日後の血管にシアストレスを加えて血栓形成を誘発させるとPAF-AH導入血管では血栓形成が完全に抑制された。カテコラミン負荷でもNO産生を阻害しても抗血栓作用は影響を受けなかった。接着因子であるICAM-1,VCAM-1の血管壁での発現レベルおよびマクロファージの浸潤数で評価すると、PAF-AH導入血管では炎症反応が強く抑制された。内膜肥厚も有意に抑制された。変性LDLに対する抗体を用いた免疫染色を実施すると、傷害後短期間のうちに酸化LDLをふくむコレステロールが血管壁に蓄積することが初めて明らかになった。PAF-AH導入血管では酸化LDLの蓄積のみが著明に抑制されていた。循環血液中のPAF-AH活性やコレステロール、酸化LDLには変動がなかった。本研究により、たとえ低コレステロ-ル動物であっても血管傷害後すみやかに脂質とくに酸化LDLが血管壁に浸潤・蓄積すること、そしてPAF-AH導入血管では酸化LDLが分解され、強力な抗炎症・抗血栓作用が発揮されることが判明した。酸化LDLの催炎症作用があらためて確認されるとともに、PAF-AHの抗炎症・抗血栓治療分子としての可能性が示された。
|