研究概要 |
COPDの発症機序の一端を分子生物学的見地から解明する。 COPDの発症には喫煙が重要な因子として考えられ、実際に喫煙によるMMP/TIMP産生のアンバランス、酸化ストレスによる細胞傷害など、COPD発症機序が明らかにされつつ有る。さらに、気道感染がCOPDの病態形成に重要であることが指摘されている。気道の感染機構は、粘液/繊毛系、マクロファージ、好中球が挙げられるが、気道感染を監視する機構の詳細は不明であった。近年、獲得免疫に対して自然免疫の概念が確立され、自然免疫でのtoll-like receptor (TLR)とTLRを介するシグナル伝達分子の機能と役割が明らかにされつつ有る。しかし、気道系におけるTLRとそのシグナル伝達機構、シグナル分子機能、など明らかでは無い。本年度は、気道のTLRの機能を明らかにし、TLRとCOPDの病態形成との関連性を明らかにする。 成績 1.気道のTLR発現:気道上皮細胞にTLR2,TLR4の発現を確認した。 2.Lipolopysaccharide (LPS), peptidoglycan (PGN)刺激による気道上皮細胞の反応 1)LPS,PGN,刺激によりmitogen-activated protein kianse (MAPK), extracellular-signal regulated kinase (ERK), p38, MAPK, c-jun-N-terminal kinase (JNK)がリン酸化された 2)LPS、PGN,刺激によりIL-8が産生され、IL-8 promoter活性、NFkB promoter活性の上昇が見られた 3)SB203580(p38MAPK),U0126(ERK),SP(JNK)によってIL-8産生が抑制された 3.LPS、PGN, dsRNA刺激による転写因子活性化とその細胞内分子制御機構の解析 1)MyD88,IRAKなどのTLRからNF-kB活性化に至るシグナル分子機構を明らかにするためにdominant negative formを導入し、そのNF-kB活性化に及ぼす影響を解析した結果、これらの分子がNF-kB活性化経路に重要であることを認めた。 結論:気道上皮細胞のTLR2,TLR4を介して気道上皮細胞に炎症性転写因子活性化とサイトカイン発現を誘導することが明かとなった。この成績は、COPDの発生にTLRを介した炎症性経路が関与する可能性が考えられ、今後、抗炎症性経路を含めた詳細な解析や遺伝的多型性の解析を実行して行きたい。
|