研究概要 |
COPDの発症機序の一端を分子生物学的見地から解明する。 昨年度は、気道感染の監視機構としての気道上皮細胞のtoll-like receptor(TLR)とTLRを介するシグナル伝達分子の機能と役割を、気道上皮細胞のinterleukin-8(IL-8)発現を中心に解析した。IL-8は好中球の遊走活性を有し、感染防御に重要な働きを演じているサイトカインであるが、その反面、炎症局所に集積した好中球は組織障害を引き起こすことが知られている。IL-8遺伝子のプロモーター領域にはNFkB結合領域が存在し、IL-8遺伝子発現はNFkBで調節されている。よって、IL-8の2面性、即ち、感染防御と組織障害の双方のバランスをとるには、過度のNFkBの活性化を制御することが重要である。また、COPDの発症に関与するMMP遺伝子発現もNFkBによって制御されている。本年度はNFkB活性の制御に焦点をしぼり、内因性NFkB制御蛋白であるA20の気道上皮細胞での機能を解析した。 成績 1.気道のTLR発現:気道上皮細胞にTLR2,TLR4の発現を確認した。 2.Lipolopysaccharide(LPS),peptidoglycan(PGN)刺激によるIL-8産生 LPS、PGNによってIL-8発現が誘導され、また、IL-8 promoter活性が誘導された 3.LPS、PGNによるNFkB promoter誘導 LPS, PGN刺激によってNFkB promoter活性が誘導された。 4.LPS、PGNによるA20誘導 LPS, PGN刺激によってA20 mRNA発現が誘導された。 5.A20遺伝子導入によるNFkBおよびIL-8 promoter活性への影響 A20遺伝子導入によってLPSおよびPGN刺激によるNFkBおよびIL-8 Promoter活性化が抑制された 結論 内因性NFkB抑制性蛋白のA20は気道上皮細胞のTLR2,TLR4を介した気道上皮細胞に炎症性転写因子活性化とサイトカイン発現を抑制することを明らかした。このような抗炎症性経路を含めた詳細な解析や遺伝的多型性の解析を実行して行きたい。
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