研究課題
基盤研究(B)
本研究は、COPDと気管支喘息発症機構を細胞内シグナル分子の機能解析と制御機構を中心に実施した。計画した遺伝的背景の解析は、学内倫理委員会の承認を受けた後に学外研究機関に症例のDNA配布を申請し、承認を受けたが、研究機関中に配布されなかった。このために、研究計画書に記載した、本研究目的の一部である細胞内シグナル分子の遺伝的多型性の解析は実施できなかったのは残念である。しかし、気道上皮細胞、血管内皮細胞のCOPDと気管支喘息の発症に密接に関係する細胞外刺激による細胞内シグナル分子の活性化機構やその生物学的意義に関して、その一端を解明した。さらに、細胞内シグナル分子、ASK-1ノックアウトマウスを使用し、試験管内で確認されたこの細胞内シグナル分子の機能を生体内での機能確認へと発展させた。ASK-1が分子標的治療の標的分子となる可能性を示唆したが、ノックアウトマウスの成績からはさらにその生物学的機能を確認する必要性が示された。呼吸器系のTLRの機能解析を気道上皮細胞と血管内皮細胞を中心に行い、TLRを会するMAPK経路とNFkB経路の活性化を明らかにした。さらに、その制御を、細胞内シグナル分子の阻害、A20蛋白による阻害と、多方面から明らかにした。従来、炎症の制御に関しては、炎症の発生.にpositiveの関与する細胞内シグナル分子や転写因子の機能を阻害薬などで制御する思考が主であった。本研究は、生体が本来兼ね備えている制御機構に着目し、炎症に関与する転写因子活性化を抑制する蛋白に着目した。その結果、NFkB活性化抑制蛋白であるA20の機能解析を行い、生体内の炎症発生を制御する可能性を示唆する成績を得た。現在、A20発現を遺伝的に操作したマウスでその生物学的意義を確認している。
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