研究概要 |
1.血管内皮細胞との混合培養系、単離糸球体,単離腎,生体腎においてギャップ結合蛋白が機能蛋白として存在し、糸球体メサンギウム細胞が合胞体として糸球体微小循環系調節に関わる機能を果たしている事、レニン産生細胞のレニン産生機構にはATPを介するシグナル伝達機構が重要である事を明らかにした。 2.糸球体endocapillaryにおける細胞-細胞、細胞-細胞外基質の生理的・物理的相互作用の破綻がメサンギウム細胞の合胞体として機能障害を引き起こし、存在する糸球体病変を進行させ、糸球体硬化病変形成に到るという作業仮説を立てるに至った。 3.糸球体内皮細胞を用いて、高糖下での一酸化窒素(NO)の産生能について検討し、NOSの産生増加が認められるものの最終的なNO産生量は低下していることから、super oxide産生亢進によるNOSのavailability低下が内皮細胞障害をもたらすと想定された。 4.均一なヒト腎糸球体内皮細胞を得る目的でSV-40による同細胞の不死化細胞株を樹立し、その細胞の性格づけ、抗内皮細胞抗体価測定用の標準細胞としての価値について明らかにした。 5.腎不全に至る進行性糸球体硬化症を惹起する抗Thy-1.1単クローン抗体の対応エピトープを決定し、このエピトープがCa++シグナリング、メサンギウム細胞-内皮細胞間の接着に関与する機能エピトープとして存在することを明らかにした。 6.片腎抗Thy-1腎をMunich Wistar Ratに惹起し、可逆性Thy-1腎炎との比較から、糸球体内血流の異常が病変の不可逆性進行に大きく関連していて、可逆性-不可逆性の分岐点を同定することができた。 7.進行性腎糸球体硬化症をEGFP(-) ratにEGFP(+) ratの骨髄細胞を移植したキメララットに惹起する。その結果、従来から言われていたメサンギウム細胞だけでなく、糸球体内皮細胞も骨髄由来血管内皮前駆細胞により修復されていることが判明した。また、このモデルに骨髄細胞を注入治療すると、腎不全死を著明に抑制し、腎炎進行を明らかに軽減させる事が明らかとなった。
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