研究概要 |
本年度は同一ロットによる検索を可能とした昨年度大量精製抗Thy-1単クローン抗体1-22-3を用い、不可逆性モデルとしては主として2週間隔の両腎ラットへの2回投与モデルをその惹起方法のヒトへの類似性の故に優先して用いた。1回投与による可逆性モデルを対照として諸因子動態の比較を継続している。動態比較中の因子としてはMCP-1,fractalkineなどのchemokine、IL-2などのT細胞由来cytokine、糸球体上皮細胞(podocyte : P)障害が腎病変の不可逆性に影響を及ぼす可能性を当教室で明らかにしえたことから、ネフリンなどP機能関連蛋白分子、IP-10などP防御因子、細胞周期関連因子に加えてさらに新しくFactor V,局所でのアンギオテンシンII,コラーゲン分解酵素,TGFβなどについても検索を続行している。また昨年度検索中であった薬物(漢方薬GTWを含む)や食餌中蛋白制限が各因子の動態にどのような修飾を加えるかについても新たな所見が得られた。 現在までに明らかにされた結果を、既に昨年度報告された結果の確認も含めて以下に列挙する。1)腎糸球体内fractalkineの発現とCX3CR1陽性細胞の糸球体内浸潤の増加は病変進展と関連を有する。2)CD4陽性T細胞並びにTh1 cytokaineに対する抗体またはそれらの抑制剤FK506は腎炎の進展を抑制する。3)IP-10の抑制はこの腎炎モデルを悪化させる可能性がある。4)コラーゲン分解活性の低下が遷延するメサンギウム基質増加のマーカーとなる。5)TGFβのRNAレベルでの発現抑制がメサンギウム基質増加を抑制する。6)漢方薬GTWが少なくともThy-1腎炎の蛋白尿、メサンギウム基質増加並びにMCP-1,IL-2,の発現を抑制する。7)低蛋白質食の早期開始がその後の腎病変進行を遅延させる。 なお臨床腎生検材料の予備的検索が予定されていたが、小児科46例でまずマクロファージについての検索が始まった。
|