研究課題/領域番号 |
15390269
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
松尾 清一 名古屋大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (70190410)
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研究分担者 |
湯澤 由紀夫 名古屋大学, 大学院・医学系研究科, 講師 (00191479)
森田 良樹 名古屋大学, 医学部附属病院, 助手 (10335044)
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キーワード | 進行性腎障害 / 腎尿細管間質 / 蛋白尿 / 補体 / 新規治療法 / 腎保護 / 細胞浸潤 / 腎線維化 |
研究概要 |
進行性腎障害のメカニズムのうち、尿細管間質障害は最も重要と考えられているが、その有効な治療法の開発について焦点を当て、本年度の計画で次のような基礎的な検討を行った。 (1)まず、尿中補体活性化産物(MAC)と腎機能の予後を観察期間を平均40.3ヶ月に延長して検討した結果、尿中MACは腎機能の予後を推測する独立した因子であることが判明した。この結果、尿中補体活性化が腎機能障害の進行に重要な因子であることがあらためて証明された。 (2)近位尿細管Brush Border Vesicles(BBVs)を新鮮ヒト血清とインキュベーションし、SDS-PAGEで展開して補体成分C3の分解過程を見たところ、BBVsは補体活性化を惹起し、活性化フラグメントが確認された。活性化に関わるBBVs上の分子はかなり分子量の大きいものか、あるいは糖脂質のような非蛋白系の物質であることが推測された。 (3)尿細管障害によって惹起される腎線維化/間質障害進行のメカニズムを明らかにするために、ケモカインの役割を検討した。その結果、細胞膜上に存在するカベオリンが、多機能性阻害の役割を担っていることが推測された。 (4)また、ヘパリン結合性多機能性成長因子であるミッドカイン(MK)がケモカインを介したマクロファージの浸潤を通して間質障害に深く寄与していることが判明し、アンチセンスによるMKの抑制、またはケモカインの一種であるMCP-1の抑制により、腎尿細管間質障害が有意に軽減されることが、マウスやラットの実験的腎障害モデルにおいて証明された。 (5)さらに、尿細管細胞においては、バクテリアやDNAのレセプターとなっているToll familyの発現が確認され、それらを通じて、尿細管細胞の活性化、その結果としてのケモカインの産生が増加することが明らかにされ、今後Toll familyのシグナル伝達経路やその制御法が、腎障害の治療につながる可能性が示唆された。
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