研究課題
基盤研究(B)
今回の研究計画を実施した結果、次のような成果があった。(1)タンパク尿を呈する腎疾患患者140名の尿中補体活性化産物(membrane attack complex : MAC)を測定し、多変量解析した結果、尿中MACは腎障害進行の独立した危険因子であることが明らかになり、腎機能の予後推定の有力なマーカーとなることが示された。(2)ヒト近位尿細管細胞BBV分画をSDS-PAGE上に展開して、新鮮血清を反応させて補体活性化(C3bの結合)が見られる分画を検討し、尿中に漏出した補体を活性化させる分画が存在すること、その同定には更なる検討が必要と考えられた。(3)尿細管間質障害の主要なメカニズムの一つである単球/マクロファージの間質への浸潤を阻害するための治療法開発の基礎研究を行い、遺伝子導入などの方法でタンパク尿に伴う尿細管間質障害には単球/マクロファージの遊走を抑制するストラテジーが有効であることが示された。(4)さらに、尿細管間質障害の治療ターゲットとしてのmidkine(MK)、Toll-like receptor(TLR)、caveolin(CV)などを検討し、これらの物質はいずれも近位尿細管細胞に発現しており、尿細管障害や間質線維化の過程で重要な役割を果たしていることが明らかになった。(5)これらの中で特にMKは、尿細管間質障害時に発現が増強し、ノックアウトマウスでは種々のモデルで腎障害が大幅に軽減されることから、治療ターゲットになりうるものと考えられた。実際に、アンチセンスを用いて尿細管細胞のMKをターゲットとした基礎実験では、腎障害が軽減されることが証明された。(6)以上、今回のプロジェクトにおいて研究した成果から、尿細管間質障害の過程には複数の物質が関与しており、そのうちのいくつかは有力な治療ターゲットとなりうること、今後、実地臨床への応用に向けて実用化研究を発展させる必要があること、特に、有効性、安全性、特異性、経済性、持続性等の諸点で高いハードルが存在しており、実用化のためにはこれらを克服してゆくことが必須であること、が明らかになった。
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