研究概要 |
本邦の多発性硬化症(MS)の臨床病型として、病変が中枢神経内に播種する通常型MS(CMS)と視神経炎と脊髄炎のみを呈する視神経脊髄型MS(OSMS)がある。これらの病型における臨床及び免疫病態を比較解析した。 (1)自験MS症例における二次進行型MS(5.0%)は、いずれもCMSであり対麻痺と体幹失調を呈する症例が多かった。一方OSMS症例で二次進行型に移行した症例はなく、CMSと異なりOSMSの障害はattack-relatedだった。 (2)CD26,CD30はそれぞれTh1,Th2関連分子である。OSMS,CMSでは再発時の髄液中で対照群より可溶性CD26濃度が有意に上昇していた。可溶性CD30濃度は3群で差はなかった。今回の結果からはOSMSでも有意なTh1反応が起こっていることが示唆された。 (3)OSMS, CMSの剖検例においてCCR7とそのリガンド分子の発現を免疫組織化学法にて解析した。両群とも浸潤白血球の一部にCCR7が、またその周囲にリガンド分子が発現しており、炎症部位への遊走へのCCR7系ケモカインの関与がうかがわれた。 (4)OSMSの髄液をランダムペプチドを提示するファージライブラリーと反応させ髄液IgGの標的抗原を検索した。その結果common peptide motifの検出はまれであり、ヘルペスウイルスに相同な配列が高頻度に検出されたCMSと異なっていた。 (5)OSMS,CMSの再発時に増幅するT細胞クローンをCDR3 Spectratypingで解析した。CMSではVβ5.2の頻度が約3割と高頻度だったが、OSMSではこれより低かった。 以上の如く、OSMSはCMSと異なる病態であることが示唆された。
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