研究課題/領域番号 |
15390273
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
阿部 康二 岡山大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (20212540)
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研究分担者 |
東海林 幹夫 岡山大学, 大学院・医歯学総合研究科, 助教授 (60171021)
永野 功 岡山大学, 医学部・歯学部附属病院, 講師 (80335603)
永田 哲也 岡山大学, 医学部・歯学部附属病院, 助手 (50362976)
林 健 岡山大学, 医学部・歯学部附属病院, 助手 (40314679)
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キーワード | ALS / SOD1 / トランスジェニックマウス / IGF-1 |
研究概要 |
平成16年度は、血管内皮増殖因子(VEGF)の運動ニューロン保護作用を解明するために、VEGFの受容体Flk-1をantisense oligonudeotides(ODNs)にてブロックし、その効果を調べた。その結果、VEGFの作用であるAktやERKのリン酸化は阻止されたが、正常酸素濃度下では運動ニューロン死は起こらなかった。低酸素刺激はこれに低酸素刺激を加えることによって、運動ニューロンは1週間で約50%に減少した。低酸素曝露はVEGFを誘導しFlk-1を介して、AktおよびERKのリン酸化を惹起するが、antisense ODNs投与によってこれらのリン酸化は著明に減少した。従って、低酸素曝露下では、VEGFが運動ニューロン保護に重要な役割を果たしていることが示唆された。 一方、以上のような分子病態解明の研究と並行して、新しい治療法のin vivoモデルでの開発も同時進行で行い、微量注入浸透圧ポンプを用いてモデルマウスの脊髄腔内に神経栄養因子IGF-1を直接持続注入する治療法を確立し、その治療効果を検討し治療有効性を確認した。すなわち、モデルマウスの寿命はIGF-1髄注により11%程度延長し、また腰部脊髄組織における運動ニューロン細胞減少を有意に抑制効果が認められた。さらに、IGF-1投与動物の脊髄では、生存因子であるbcl2,リン酸化AktとERKが上昇していることが見出された。これが運動ニューロン死抑制の機序として働いていることを明らかにした。ALS患者に対してもこの治療法の有効性を調べるために、患者の同意のもとに微量注入ポンプの皮下埋込みを行いIGF-1を2週間毎に投与した。この脊髄腔内への神経栄養因子持続注入療法の開発応用も当初予定数が終了し、解析の結果、IGF-1がALSの運動機能低下を遅延させることが判明した。
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