研究概要 |
パーキン遺伝子の解析修了家系は,503家系(589症例)(劣性遺伝127,優性遺伝94,若年孤発型146,不明136).変異内容はエクソンの欠失66,挿入2,点変異20,複合ヘテロ変異41,ヘミ変異36家系,合計32.8%で陽性であった.更にパーキン遺伝子変異陰性の家系について連鎖解析を行っている.機能についてはユビキチンリガーゼであることがわかっており,基質の蓄積が細胞死を惹起させることが推定される.Loss-of-function型変異効果が疾患発生に関わっているため,アデノウィルスベクターに全長のアンチセンスパーキンを構築し,パーキン蛋白をノックダウンさせた.アデノウィルスのtiterに依存して,ドパミン神経細胞様であるSH-SY5Y細胞にアポトーシスが誘導された.またアンチセンスパーキンにセンスα-シヌクレインを感染させるとアンチセンスパーキンによる細胞死は抑制された.パーキン遺伝子変異よる若年性パーキンソン病ではLewy小体が一般に観察されない.一方,Lewy小体の形成にドパミンキノン体とα-シヌクレインの複合体が関わっているとする報告があることより,ドパミンキノン体に注目して検討した.キノン体の変わりにドーパ・ドパミンクロムを測定したところ,パーキンアンチセシスでは内在性SH-SY5Y細胞と比較して数倍もキノン体が増加しており,α-シヌクレインの発現量を増やしてやるとキノン体の発生量は低下した現在α-シヌクレインの過剰発現が細胞死に直結する報告があるが,一方で発現が少量である時も細胞死が促進されたことになる.すなわちα-シヌクレインにはdual functionが存在し,ドパミンキノン体を介した細胞死に対して抑制的に作用していることがわかった.本研究では,α-シヌクレインとパーキンがキノン体を介して細胞死を抑制していると推定された.
|