神経変性疾患の細胞変性には疾患関連遺伝子産物の凝集を伴うことがしばしばみられることが認識されてきている。たとえばCAGリピート病(ポリグルタミン病)では核内にポリグルタミンの凝集体が形成され、パーキンソン病ではα-synucleinが神経細胞にレビー小体として凝集し、多系統萎縮症ではオリゴデンドログリアにα-synucleinがglial cytoplasmic inclusion(GCI)として凝集する。アルツハイマー病ではβ蛋白が老人斑に沈着し、プリオン病ではプリオン蛋白がKuru斑として沈着したり、細胞質に沈着がみられたりする。本研究はこれらの異常蛋白の凝集過程の「場」のプロテオミクス検索を網羅的に行うことにより、その病態を検索しようというものである。本研究では以下の点を達成した。1.アルツハイマー病のAPP結合とプリオン蛋白結合蛋白が異なることを見いだした。2.ハンチントン病で線条体において著明に減少している遺伝子がsodium channel beta4 subunitであることを見いだし、これがラフト蛋白であることから同様の手法で結合蛋白を同定できることがわかった。3.凝集体結合蛋白の決定からユビキチン結合蛋白が異常蛋白の蓄積にユビキチンを介して結合することを示した。4.in vivoにおけるポリグルタミン凝集体結合蛋白を同定するために、polyglutamine+EGFPのトランスジェニックマウス作成し蛍光凝集体を形成することを示した。
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