凝集体形成の「場」(ラフト、凝集体)が独自の蛋白複合体を形成しているという仮説に基づき、この複合体のプロテオーム解析を網羅的に行った。その結果以下の結果を得た。 1.ルブロールを用いたラフト精製法を確立した。同法によって精製したラフトをもちいて蛋白特異的ラフトの免疫沈降にも成功した。 2.ポリグルタミン発現細胞の解析から伸長ポリグルタミン発現にともなって発現増加する60kDaの蛋白を検出し、その解析からその蛋白がp62であり、これがaggresome構成蛋白の一つであることを同定した。 3.さらにポリグルタミン発現細胞の細胞質、核内封入体を非変性状態で精製し、これらの構成成分を質量分析によって解析した。これによって新規の凝集体結合蛋白を同定してきている。これらの中には凝集体結合について既知のシャペロン、今まで知られていなユビキチン結合蛋白、転写因子などが存在した。現在その結合の意義を検討している。 4.ハンチントン病で線条体において著明に減少している遺伝子がsodium channel beta4 subunitであることを見いだし、これがラフト蛋白であることから同様の手法で結合蛋白を同定できることがわかった。 5.このsodium channel beta subunit 1-4がアルツハイマー病の主要病態蛋白であるβ蛋白前駆蛋白APPと同様にラフト蛋白であることからさらに解析を進め、BACE1とγセクレターゼによって切断されることを見いだした。この蛋白はAPP以外でこれらのプロテアーゼによって切断される唯一のものであり、今後アルツハイマー病の病態との関連に興味が持たれる。 6.in vivoにおけるポリグルタミン凝集体結合蛋白を同定するために、polyglutamine+EGFPのトランスジェニックマウス作成し蛍光凝集体を形成することを示した。
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