研究概要 |
1)生直後のラット膵臓からコラゲナーゼを用いた方法により導管上皮細胞を分離した。各種マーカーの発現を確認した上で、その培養系を確立した。さらに膵β細胞の分化誘導因子であるアクチビンとベータセルリン(BTC)を添加し、これらの細胞を効率よくインスリンや他のβ細胞マーカーを発現する内分泌細胞に分化させる方法を確立した。このインスリン産生細胞を用いて偽膵島ともいえる細胞塊を作製した。In vitroで分化させた細胞のインスリン産生能、分泌能およびグルコース反応性は偽膵島を形成させることによって大きく増加した。つぎにこれらの偽膵島をブトレプトゾトシン投与により1型糖尿病状態にしたヌードマウスの門脈内に移植し、その血糖を正常化させることが出来た。これにより膵幹細胞を用いた細胞療法の基本的手技が確立された。2)体外で幹細胞を分化させ、細胞移植を行うという糖尿病の再生医療を実現するためには、容易に採取でき、かつ大量に増幅可能な幹細胞を利用する必要がある。我々はこのような細胞の候補として成体ラット肝臓から得られる肝幹様細胞(hepatic stem-like cells, HSL cells)に着目した。この細胞は肝臓の非実質細胞分画から得られる細胞であるが、α-fetoproteinを発現するとともにCK19を発現し、条件によっては肝細胞や胆管上皮細胞に分化する性質をもっている。我々はこの細胞に酪酸ナトリウムとBTCを添加し、インスリンやPGP9.5などを発現する膵内分泌細胞へと分化させることができた。
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