研究概要 |
本研究では(1)消化管からインクレチンが分泌される分子機構-栄養と腸管の機能連関-(2)インクレチンによる代謝調節機構-腸管と各種臓器の機能連関-の解析を通じて腸管シグナルの生体における役割を明らかにすることを目的にしている。 膵β細胞においてはGIP受容体のスプライシングバリアントが存在しこのバリアントでは通常のGIP受容体に対しドミナントネガティブに作用することを明らかにした。このように膵β細胞におけるGIP作用不全の生じる機構の一端を明らかにすることができた。GIP受容体欠損マウスとGLP-1受容体欠損マウスのダブル欠損マウスでは骨梁が細く短くなるがこれは破骨細胞の活性に対しGIPおよびGLP-1のいずれも抑制効果を有していること、ならびに骨芽細胞に対してはGIPが促進作用を示すことによると考えられた。骨芽細胞細胞株においてはGIPが濃度依存的にアポトーシスを抑制することを示した。一方、脂肪細胞にのみGIP受容体を再発現するトランスジェニックマウス(adipo-GIP-/-)を作製し、脂肪細胞へのGIP受容体の再発現とそれ以外の組織でのGIP受容体欠損を確認した。脂肪細胞との関わりに関して、GIP受容体欠損マウスにIRS-1欠損マウスとの交配により検討した。その結果、インスリンシグナルが減弱した状態においてもGIPシグナルの欠損は肝臓における脂肪のβ酸化を介してインスリン抵抗性改善に関与することが明らかになった。さらにその改善の分子機構として肝細胞におけるUCP-2,FATの遺伝子発現量の増加が基礎となっていることを明らかにすることができた。そしてβ酸化の制御に関わる他の遺伝子であるHDとCPT-1とACXは遺伝子発現量は改善に関与しないことも明らかにできた。
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