骨代謝における骨細胞の機能をin vivoで検証するために、骨細胞をablateできるマウスを開発した。骨細胞に比較的特異的に発現するDMP-1(dentin matrix protein-1)のプロモーターの下流にジフテリア毒素(DT)の受容体であるヒトHB-EGF(heparin binding-EGF)cDNAをつなげたDNAコンストラクトを作成し、トランスジェニックマウスを作出した。マウスは本来DTに抵抗性を示すが、DT受容体であるヒトHB-EGFを発現する細胞のみが、外因性に投与したDTに対して感受性を獲得してablateされるようデザインされている。2種類のDMP-1プロモーター領域を用いて計7系統のトランスジェニックマウスを樹立し、さらに樹立した系統のうち最も骨細胞の死滅する系統を絞り込み、ジフテリア毒素(5μg/kg〜500μg/kg)をトランスジェニックマウス(Tg)およびコントロールマウス(Wt)に投与し8日間飼育した。結果、50μg/kgまではほぼ用量依存的に骨細胞の死滅が認められ、最大で75%の骨細胞の死滅を観察した。骨細胞を死滅させたTgマウスにおける骨代謝動態を形態計測法で解析した結果、骨形成能の抑制と石灰化速度の遅延が見られた。毒素投与により骨細胞を死滅したTgマウスの大腿骨および脛骨からtotal RNAを回収しマイクロアレイ解析を行った。骨細胞に発現の見られることが知られる、DMP1(dentin matrix protein 1)、screrostinなどのmRNA発現レベルは、対照群であるWtに毒素を投与したものに比して明らかな低下が認められた。また骨細胞で発現している遺伝子群の候補について解析中である。
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