研究概要 |
プロラクチン放出ペフチド(PrRP)は、延髄のA1およびA2のノルアドレナリン細胞および背内側核で産生される。これまで我々はPrRPがストレスを仲介するペプチドであることを明らかにしてきた。本年度は特にPrRP陽性神経細胞の機能制御に関する研究を行った。この結果以下のような事が明らかになった。 1,副腎摘除動物におけるPrRP陽性細胞体の最後野での出現:副腎摘除動物において正常動物では存在しないPrRP陽性の細胞が最後野で出現した。この細胞は副腎からのステロイドホルモンの投与によっても消失しなかった。最後野はおう吐、浸透圧調節、血糖調節などの重要な機能があることから、副腎摘除とこれらの機能との関連が調べられたが、現在までの所、最後野におけるPrRP産生細胞が出現する機構は明らかになっていない。 2,副腎におけるPrRP陽性細胞の同定:PrRPは副腎でも発現する事が明らかになっていたが、産生細胞の同定はされていなかった。副腎組織では免疫細胞化学およびin situ hybridizationの何れでも陽性反応に成功しなかった。これに対し、副腎髄質を構成する細胞を単離し、培養するとPrRP免疫陽性細胞が出現した。これらの細胞はカテコラミン産生細胞で、酵素の局在からPrRP陽性細胞はアドレナリン細胞の一部であることが明らかになった。 3,性腺との関係:延髄におけるPrRP陽性細胞は性周期によって機能が周期的に変わることが明らかになった。この変化は性ステロイドホルモンによって制御されていることが予想されたためにエストロゲン投与実験を行った。この結果、エストロゲンはPrRP陽性細胞の機能を抑制する事が明らかになった。特にストレスを負荷した動物におけるPrRP陽性細胞の機能亢進はエストロゲンの投与によって顕著に抑制されることが明らかになった。これらの発見はPrRPによるストレス反応の仲介がエストロゲンによって修飾されることを示している。
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