研究概要 |
分子レベルでは,様々なポリペプチド鎖長のXIIIBタンパク質を作製し,同種二量体形成,XIIIAとの異種四量体形成に関わる領域が,それぞれ第4と第9,第1寿司ドメインであることを発見した。この複合体形成によりXIIIAが安定化されることをprotease抵抗性試験で示し,XIIIBがfibrin crosslinkingを促進する効果を持つことを新たに見出した。また,XIIIBタンパク質の4つの表現型の相違が遺伝子型の違いに基づくという分子機序を解明した。 細胞レベルでは,平成11〜14年度の研究でXIIIAがフィラメント様の構造及び核内への局在を示すことを初めて観察したので,Yeast Two-Hybrid法でのXIIIAと相互作用するタンパク質を検索し,80を超える侯補タンパク質を見い出した。actin, trimereic G protein β-subunit(Gβ2)などについては,in vitro transcription/translation系を用いた免疫沈降実験と共焦点レーザー顕微鏡による共局在の観察から,XIIIAとの相互作用を確認した。また,培養培地に低分子アミンを添加して核内タンパク質にアミン分子が取り込まれることを見いだし,分離した核を用いてこれがtransglutaminase反応によることを実証した。Gβ2については,細胞の脂質ラフトでのXIIIAとの共局在を確認したが,これは細胞質で生合成されたXIIIAが形質膜外に輸送されることを意味するので,放出機構の存在を初めて確認した画期的な発見である。 個体レベルでは,XIII因子両サブユニット欠損マウスの作製に成功し,XIIIA及びXIIIBが異なる組織・細胞で産生されることを確認し,雄XIIIA欠損マウスは出血に起因した心筋障害を引き起こして生存率の低下を示すことを新たに見出した。また,6例のXIII因子欠損症疑いの症例を解析して3例にXIII inhibitorの存在を認めたので,後天性XIII因子欠損症に注意すべきことを強調した。
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