我々が同定したlimitinに関し、IFN-αやIFN-βと相同性を有する事実・IFN-α/β受容体と結合する事実・抗ウイルス活性を有する事実を明らかにした。これらの事実に基づき、Limitinは新種のI型IFNと認められIFN-ζと命名された。リコンビナントIFN-ζ/limitinを作製し、IFN-ζ/limitinの生理活性をIF-αと同一実験系にて直接比較した。IFN-ζ/limitinは、腫瘍細胞増殖抑制・MHC class I発現増強・CTLキラー活性増強に関しIFN-αと同等の生理活性を示した。一方、正常骨髄球・赤芽球・Bリンパ球・巨核球前駆細胞に対するIFN-ζ/limitinの増殖抑制作用は、IFN-αと比較して減弱していた。特に、IFN-αをマウスに投与すると骨髄中の骨髄球・赤芽球前駆細胞数が減少したのに対し、IFN-ζ/limitin投与では影響を及ぼさなかったことが象徴的であった。次に、IFN-ζ/limitinやIFN-αによる増殖抑制シグナルを解析した。線維芽細胞では、抗ウイルス作用誘導及びISREプロモーター活性誘導に対し、IFN-ζ/limitin刺激ではIFN-α刺激と比較してIRF-1依存性の経路がより重要であった。培養巨核球では、IFN-ζ/limitinは、IFN-αと同程度のStat1リン酸化やSOCS-1遺伝子発現を誘導した。しかし、IFN-ζ/limitin刺激は、IFN-αと比較してTyk2活性化および巨核球前駆細胞増殖抑制に重要であるDaxx遺伝子発現やCrkリン酸化誘導が減弱していた。我々はDaxx分子と細胞増殖抑制の関係を解析し、Daxx蛋白をBa/F3細胞に過剰発現させるとFasを介するアポトーシス誘導が増強されることを明らかにするとともに、Daxx蛋白との新しい結合蛋白としてDMAP1やTSG101を同定した。このように、IFN-ζ/limitinの生理活性の特徴を明らかにするとともに、シグナルの特徴も徐々にではあるが解明してきた。一方、ハイブリダイゼーションによるスクリーニングやゲノムシクエンス解析を行なったが、ヒト型IFN-ζ/limitin遺伝子を同定できなかった。そこで、IFN-ζ/limitin様ヒトIFNの構築を目的としてIFN-ζ/limitinとIFN-αのシークエンスの違いに基づき種々のアミノ酸置換IFN-αを作製した。本研究成果は、IFN-ζ/limitin様ヒトIFNの構築に貴重な情報を提供するだけでなく、副作用を減らす新しいIFN治療戦略確立に寄与するものである。
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