研究分担者 |
池田 康夫 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (00110883)
朝日 厚子 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (50348265)
鈴木 重明 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (50276242)
猪子 英俊 東海大学, 医学部, 教授 (10101932)
井上 貴文 東京大学, 医科学研究所, 助教授 (10262081)
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研究概要 |
本研究課題は,研究代表者が見出した単球由来多能性細胞(monocyte-derived multipotent cell ; MOMC)を組織修復・再生医療へと応用するための基礎研究である。そのため,(1)MOMCの網羅的遺伝子発現解析による多分化能を規定する遺伝子の同定,(2)MOMCの機能的な心筋,神経,血管内皮への分化能,(3)造血幹細胞増幅能,の3つの点について検討した。 単球系細胞の中で唯一多分化能を有するMOMCに選択的に発現する遺伝子の中に分化能にかかわる遺伝子が含まれる可能性を想定し,Genechipを用いた網羅的遺伝子発現解析手法を用いてMOMCに選択的に発現する6つの遺伝子(DLG3、Myo10,SEPT3,EFNA3,ATF-1,SAP30)を同定した。MOMCは特定の分化誘導培養条件により骨,軟骨,骨格筋,脂肪などの間葉系細胞へと分化することが知られていたが,ラット胎児由来の心筋および脳の一次培養細胞との共培養により,少なくともin vitroで心筋,神経の系統への分化傾向を示すことが明らかとなった。また,各種血管新生因子存在下でMOMCが血管内皮様の形態を示す細胞へと分化し,それらは遺伝子・蛋白発現,機能(ヒスタミン刺激でのvon Willebrand因子放出,低酸素暴露によるVEGFR1遺伝子発現の上昇,Matrigel中での管腔構造形成)のいずについても成熟血管内皮細胞と区別できなかった。さらに,免疫不全マウス腫瘍血管新生モデル,ラット脳虚血モデルへのMOMC移植により,in vivoでの血管内皮への分化を確認した。一方,MOMCはin vitroでヒト造血幹細胞の増幅を支持したが,未分化性を維持する活性は低く,むしろ分化段階のすすんだ血球前駆細胞を増やした。 以上より,MOMCは幹細胞移植による組織修復・再生療法に適した多能性細胞であることが確認された。今後,難治性疾患に対する自己MOMC移植療法の早期実現が望まれる。
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