研究概要 |
非血縁者間造血幹細胞移植においてHLA-A,B,C,DRB1の遺伝子型不適合度と臨床成績、重症GVHDなどの移植関連免疫反応との関連を明らかにすることを目的とした。HLA-A,B,C,DR,DQのDNAタイピングをドナーと患者の検体を用いてレトロスペクティブに実施した2500症例を対象にした。さらに、NK細胞受容体であるkiller cell Ig-like receptor(KIR)のligand不適合をHLA-C型から推測し、その影響につき検討した。HLA-A、B、DR血清型適合移植においてHLA-A B C DRB1の遺伝子型適合度別の3年生存率、6年生存率、重症GVHD発症率を比較したところ、以下の順位で生存が良好であることが判明した。1位 全適合、2位 DRB1 1座不適合、3位 HLA-C座 1座不適合(ただしKIR ligand不適合を考慮する)、4位 HLA-C+DRB1 2座不適合、5位 HLA-AまたはHLA-Bの1座不適合、6位 4位を除く2座不適合、7位 3座不適合、8位 すべての抗原で1座以上の不適合となった。HLA-C不適合症例におけるKIR不適合の影響を解析すると、NK細胞受容体の一つであるKIR2DL1は標的細胞のHLA-CのGroup 1エピトープ(Cw2,4,5,6に共通)を認識し、このligand結合によりNK細胞の活性が抑制されることが判明している。同じく、KIR2DL2/3はGroup2エピトープ(Cw1,3,7,8に共通)と結合する。非血縁者間移植では、ドナーと患者のHLA-C型が異なる場合に、このligand結合が外れる症例がある。GVHD方向(ドナーのエフェクター細胞は活性化される組み合わせ)のみの不適合は4.6%の症例、拒絶方向のみの不適合は5.8%の症例、両方向の不適合は0.5%の症例に認められた。HLA-C不適合症例の中で、HLA-C単独不適合(表1で順位3位)では、KIR ligand不適合(GVHD方向)で重症急性GVHDの頻度が34%と適合症例の18%にくらべ有意に高率であり、HLA-C+DRB1不適合症例(表1で順位4位)でもKIR ligand不適合(GVHD方向)で重症急性GVHDの頻度が41%と適合症例の25%にくらべ有意に高率であった。今後移植片対腫瘍効果についても検討する。
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