研究概要 |
同種造血幹細胞移植は自家移植や同系移植に比べ移植後の白血病の再発が少ないことが臨床的に示され、この白血病抑制効果を移植片対白血病効果(graft-versus-leukemia : GVL)効果と呼んでいる。ドナーと患者の組織適合性抗原の違いが如何にGVL効果に影響を及ぼしているかを解明することを目的とし、非血縁者間骨髄移植を受けた白血病症例を対象にHLA抗原の違いと白血病再発との関連をCox regression modelを用いた多変量解析法で臨床データを変量に加えて解析した。この結果、 1.HLA-C不適合症例では白血病再発率が低下した。 2.とくに急性リンパ性白血病で低下が著しかった。 3.HLA-C型から推測できるNK細胞受容体KIR2DL ligand不適合症例では反対に白血病再発が高率であった。さらに、 4.HLA-DPB1不適合症例で有意に再発率が低く、とくに慢性骨髄性白血病で低下が著しかった。 5.HLA-A,-B,-DRB1,-DQB1の違いでは白血病再発率に有意の差はなかった。 上記知見は、標的細胞上のHLA抗原の種類と白血病病型がGVL効果を解析する上で重要であることを示しており、同種移植においてドナー由来のエフェクター細胞が白血病細胞を攻撃するGVLの機序を解明するための基本的な情報を得ることができた。さらに、これら抗原を標的とする特異的細胞免疫療法開発の基礎データとして重要であると考えられた。
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