研究概要 |
非血縁者間骨髄移植においてドナーと患者間のHLA抗原の違いが移植成績に大きな影響を与えていることが明らかになり、HLA-A, B, C, DPB1の遺伝子型の不適合、およびNK細胞受容体であるKIR2DLのリガンド不適合(GVHD方向)が急性GVHDの頻度を高めること判明している。また、HLA-C不適合症例では白血病再発率が低下し、とくに急性リンパ性白血病で低下が著しいこと、HLA-C型から推測できるNK細胞受容体KIR2DL ligand不適合症例では反対に白血病再発が高率であること、HLA-DPB1不適合症例で有意に再発率が低く、とくに慢性骨髄性白血病で低下が著しいことが判明している。今年度は、HLA型不適合の組み合わせと急性GVHDとの関連を5210症例につき多変量解析法を用いて解析を進めた。その結果、17組の重症GVHDが有意(P<0.002)に高率に生じるHLA型の組み合わせを同定できた。HLA-Bは1組、Cは7組、DRB1は2組、DQB1が1組、DPB1は1組であった。HLA-C7組のうち4組はKIR2DLリガンド不適合な組み合わせであった。さらに、重症急性GVHDの発症に関与するHLA分子上の部位と置換アミノ酸を同定することができた。 これら知見は、急性GVHD発症の機序だけでなく、同種移植における移植片対腫瘍効果(GVT)の機序解明への道を開くものであり、これらを標的とする特異的細胞免疫療法開発の基礎データとして重要である。
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