アデノウイルスベクターを用いた遺伝子治療は関節リウマチ(RA)の新規治療法として期待されている。しかしその問題点としては、免疫反応が惹起されるためにベクターの排除が起こったり、関節局所に関節炎が引き起こされたりすることが知られている。したがって、ベクターの改変によってより少ないベクター量で効果的に滑膜組織に遺伝子導入が可能になれば、これらの問題点の解消が期待される。そこで、本年度の研究では、アデノウイルスファイバーを遺伝子組換え技術により改変した改良アデノウイルスベクターの滑膜線維芽細胞(FLS)への感染効率についてGFPをレポーターとして検討した。また、種々の発現カセットを持つアデノウィルスベクターについてルシフェレースをレポーターとしてFLSに感染させ、その発現効率を検討した。発現カセットには、種々の転写制御配列に加え、転写後プロセスの制御に関してmRNAの核外輸送を促進するとの報告があるWoodchuck hepatitis virus post-transcriptional regulation element (WPRE)も使用した。その結果ファイバー改変アデノウイルスベクターではGFP陽性FLSの比率が著明に増加することがわかった。また、転写制御配列の改変や、WPREの導入により発現効率は有意に増加した。このことから、ファイバーおよび発現カセットの改変の組み合わせにより、RA遺伝子治療に最適なアデノウィルスベクターが作成可能と考えられた。
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