【目的】関節リウマチ(RA)は滑膜増生とこれに伴う関節破壊を特徴とする疾患であり、我々は炎症の抑制ばかりではなく滑膜増生の制御も治療の重要なポイントであることを示してきた。実際、RAの動物モデルに細胞周期制御分子であるサイクリン依存性キナーゼ阻害因子(CDKI)p21^<Cip1>の遺伝子を関節内に導入すると、滑膜増生抑制および炎症性メディエーターなどの産生抑制により関節炎は著明に改善される。一方で、内因性p21^<Cip1>は一部のRA症例の関節滑膜に弱い発現を認めることがある。しかしながら、内因性のp21^<Cip1>が関節炎の病態に関与しているかどうかは不明である。そこで、我々はp21^<Cip1>ノックアウトマウス(p21 KO)に関節炎を誘導し、内因性のp21^<Cip1>が関節炎に関与するかを検討した。【方法および結果】RAの動物モデルであるコラーゲン誘導関節炎(CIA)において、p21 KO群ではコントロール群に比べ関節炎のスコアが高かった。また、病理組織学的解析によりp21 KOにおける炎症および関節破壊の増悪が認められた。しかしながら、免疫学的評価においては、II型コラーゲン(CII)を免疫したマウスのリンパ組織由来細胞のCII刺激に対する増殖応答および血清中抗CII抗体価はp21 KO群とコントロール群の間で差が認められなかった。なお、マウス抗CII抗体誘導関節炎においても、p21 KO群の関節炎スコアはコントロール群に比べ高かった。以上から、内因性p21^<Cip1>はリンパ球反応性の抑制ではなく、関節での滑膜線維芽細胞の増殖や同細胞からの炎症性メディエーター放出に対する抑制作用を通じて、関節炎を抑制していると考えられる。
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