研究概要 |
【目的】本研究の目的は、炎症生体におけるサイトカインによる急性期蛋白の発現機序を分子・遺伝子レベルで解析し、真の炎症病態を明らかにすることである。昨年度はヒト肝細胞株を用いて急性蛋白のSerum amyloid AA(SAA)の発現をIL-6,IL-1,TNF-α刺激で検討し、IL-6刺激が発現の増強を示し、IL-6阻害が発現抑制に最も有効であることを示した。16年度はSAA遺伝子発現に関与する転写活性機序を明らかにする。 【結果と考察】従来SAA2発現に転写因子のNF-κBとC/EBPβの活性化が報告されていたが、JAK/STATの阻害剤AG490にてSAAmRNAの発現抑制がみられ、SAAプロモーター・ルシフェラーゼコンストラクトを用いたプロモーター活性にてSTAT3の共発現で活性の増強が、dominant negative STAT3の共発現で活性の抑制が得られ、EMSAにてセリンリン酸化STAT3のプロモーター領域への関与が示唆され、STAT3が活性化に関与することが示された。また、STAT3の関与はNF-κB p65に結合し、p300とも結合し、さらにSTAT3のコンセンサス領域に結合することなくNF-κB領域の3'側に結合することによって発揮されることをIP-Western, DNA affinity chromatographyにて示した。 以上のことから、STAT3の新たな転写活性機序を示すとともに、炎症生体におけるSTAT3の関与を介してSAA発現におけるIL-6の関与を示唆した。その結果、RA治療におけるIL-6阻害がSAA発現抑制に最も有効であることを裏付けた。
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