研究課題
基盤研究(B)
【目的】関節リウマチ(RA)に対してヒト型化抗IL-6受容体抗体(MRA)によるIL-6阻害療法を行ったところ、急性期蛋白(CRP, SAA等)の正常値化が認められた。本研究の目的は、炎症生体におけるサイトカインによる急性期蛋白の発現機序を分子・遺伝子レベルで解析し、真の炎症病態を明らかにする。【結果と考察】1.MRAによるRA患者の血清アミロイドA(SAA)値MRAのI/II相、II相臨床試験(計175名)にて有効患者約80%においてSAAの正常値化(10mg/L)が認められた。2.肝細胞株を用いたサイトカイン刺激によるSAA1、SAA2mRNAの発現および阻害サイトカイン単独ではほとんど発現増強はなかったが、IL-6とIL-1またはIL-6とTNF-αで発現に相乗効果がみられた。しかしIL-1とTNF-αでは増強はみられなかった。また、IL-6阻害にてほぼ完全な産生抑制が認められたが、IL-1またはTNF-α阻害では部分的にしか抑制されなかった。3.STAT3の新たな転写活性とSAA遺伝子発現機序従来NF-κBとC/EBPβのみSAA2発現に関与が示されていたが、今回STAT3阻害剤AG490を用いた系、STAT3共発現系、EMSA, IP-Western, DNA affinity chromatography等の系にて、SAA発現にSTAT3の強い関与が示され、しかもNF-κB p65およびp300に結合し、そしてNF-κBの3'側結合を示唆し、STAT3の新たな転写機序を示した。4.SAA以外の急性期蛋白の発現機序の解析CRPはSAAとは異なる転写制御である。その他の炎症関連遺伝子の発現機序も手がけている。5.IL-6阻害によるAAアミロイドーシスの治療への展開IL-6阻害によるSAAの正常値化によりアミロイド沈着の低下がみられ、難治性AAアミロイドーシスの治療薬として期待できる。
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