研究課題
基盤研究(B)
致死的な経過をたどるX連鎖重症複合免疫不全症(X-SCID)に対し遺伝子治療が開始され、有効性が示された。しかし、副作用としてリンパ性白血病が報告された。その原因は治療に用いたレトロウイルスベクターの挿入変異など遺伝子治療そのものに起因する可能性が示唆された。そこで本研究では安全性を高めた新たな遺伝子治療法の開発を試みた。主な研究成果は以下の3点である。1.遺伝子導入細胞が癌化した場合に備えあらかじめ治療用レトロウイルスベクターに自殺遺伝子HSVtkを組み込んでおく方法を考案した。自殺遺伝子を責任遺伝子γc鎖と同時に発現させた場合、免疫系は再構築され、少なくとも半年間γc鎖の機能が維持された。さらにガンシクロビルを投与し自殺遺伝子を働かせると遺伝子導入細胞を消し去ることができた。このことから、X-SCID遺伝子治療に対する自殺遺伝子応用の可能性が示唆された。2.目的遺伝子をがん遺伝子などの存在しない特定の部位へ組み込むことができれば、安全性は高まると考えられる。ファージφC31インテグラーゼを用いた実験では造血細胞系に遺伝子を導入した場合、染色体13q14.1および18p11.2のpseudo-attP部位に特異的に組み込まれる傾向にあることを明らかにし、一方、レトロウイルスベクターの挿入変異で白血病化の原因となったLMO-2近傍には組み込まれないことも示した。3.日本全国および韓国から依頼された重症免疫不全症患者の遺伝子診断を継続的に実施しており、これまでX連鎖重症複合免疫不全症(X-SCID)をはじめ、Jak3欠損症、IL-7受容体欠損症、RAG1欠損症、Artemis欠損症を同定している。備考:厚生労働省から承認を受けている"X-SCID遺伝子治療臨床研究"の予備実験をX-SCID患者骨髄細胞を用いて行ったが、白血病発症の報告があったため、実施を保留している。
すべて 2006 2005
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