研究概要 |
小児急性リンパ性白血病(ALL)でみられるMLL-AF4, MLL-AF5q31, MLL-ENLを発現する患者検体とTEL-AML1, E2A-PBX1を発現する患者検体の遺伝子発現プロファイル解析を行ったところ、MLL-AF4, MLL-AF5q31、MLL-ENLの発現プロファイリングはいずれもよく似ており、TEL-AML1, E2A-PBX1とははっきり区別することが可能であった。特にMLL陽性ALLではFLT3, Meis1, CD44の発現が高かった。このうちFLT3の変異を検討したところ、MLL陽性乳児ALLの18.2%という、非常に高率にD835/I836のミスセンス変異を見いだした。FLT3の変異を持つMLL陽性ALL細胞株では、FLT3の恒常的なリン酸化がみられ、これらの異常は白血病化におけるいわゆる"2nd hit"である可能性が示唆された。同じくチロシンキナーゼであるPDGFRAとc-KITの変異を小児急性骨髄性白血病(AML)患者検体114例とAML細胞株69株で検討した。c-KITの発現は細胞株の72.5%、患者検体の91.2%でみられたのに対して、PDGFRAの発現は細胞株の40.6%、患者検体の55.3%にしかみられなかった。c-KITの変異は成人のt(8;21)およびinv(16)を有するAMLでは30〜40%という高率にみられるが、今回の検討では12例のt(8;21)、12例のinv(16)のうちt(8;21)の1例にD816V変異を認めたのみで、小児では成人に比べてc-KITの関与は少ない可能性が示唆されたPDGFRAの変異はこれまで白血病では全く報告がなかったが、今回初めてt(8;21)の1例とinv(16)の1例にTK2領域のミスセンス変異を見出し、c-KITだけでなくPDGFRAも白血病化に関与している可能性が示唆された。
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