研究概要 |
乳児急性単急性白血病患者にみられた複雑な染色体転座の解析を行い、MLL遺伝子と融合するMYO1F遺伝子を同定した。MYO1Fは染色体19p13.2-p13.3に局在し、ENL,ELL,EENに続く19p13に局在する4番目のMLLの相手遺伝子であった。ミオシンと腫瘍との関係では、これまで急性骨髄性白血病(FAB分類M4Eo)でみられるinv(16)(p13q22)によるCBFb-MYH11融合遺伝子と肺癌におけるMYO18Bの変異が知られていたのみであるが、最近さらに骨髄増殖性疾患でみられるt(8;17)(p11;q23)によるMYO18A-FGFR1融合遺伝子が報告され、ミオシン遺伝子の発癌への関与が注目され今後の解析が重要である。 一方チロシンキナーゼ遺伝子の変異としては、小児急性骨髄性白血病のうちt(8;21)(q22;q22)を有する症例におけるKIT遺伝子およびFLT3遺伝子の変異と予後との関係を検討した。小児の全国共通多施設共同研究AML99に登録された症例のうち46例のt(8;21)を有する症例を解析し、KITのキナーゼ領域(TK2)の変異を8例(17.4%)に検出した。FLT3のinternal tandem duplicationは2例(4.6%)のみであった。KITの変異を有する症例の4年後の無病生存率は37.5%で、KITの変異がない症例での94.7%と比べて有意に生存率が低かった(p<0.001)。KITの変異はt(8;21)以外には同じCBF(core-binding factor)白血病のinv(16)(p13q22)でも高頻度にみられることが報告されているが、それ以外の白血病ではほとんどみられず、このようなチロシンキナーゼ変異が特定の染色体転座において予後に影響する重要な役割を果たしていることが明らかになった。
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