グルココルチコイド(GC)は生体内で産生されるステロイドホルモンであると同時に白血病、アレルギー疾患等、広範囲にわたる疾患の治療にも用いられる薬剤である。GCはある種の白血病細胞に細胞増殖の停止とアポトーシスを誘導するが、その分子機序は不明な点が多い。グルココルチコイドレセプター(GR)は転写因子のひとつであり、リガンドであるGCが結合することによって活性化し、細胞質内から核に移行して標的遺伝子の転写を活性化させる。昨年度は我々の同定したGC標的遺伝子の中のいくつかをRNA干渉によりノックダウンしてGCによって誘導されるアポトーシスへの影響を解析したが、単独の遺伝子を発現抑制するだけではアポトーシスへの明らかな影響は認められなかった。昨年度はsmall interference RNA(siRNA)を委託合成し、実験に用いていたが、標的遺伝子のノックダウンに関しては必ずしも望みどおりの結果がでず、再合成を依頼せざるを得ないことも多かった。そこで本年度はRNA干渉による遺伝子のノックダウン法として、センス鎖とアンチセンス鎖RNAの発現ベクターを用いて長い2本鎖RNAをin vitroで合成し、RNaseIIIにより消化することで短いsiRNAを作成する方法を確立した。このようにして合成されたsiRNAは多数の標的遺伝子配列をカバーしているため、効率よく遺伝子発現を抑制することが複数の遺伝子と複数の細胞株で示された。ノックダウンしたい遺伝子の数が多い場合は、この方法が時間的にも費用の面からも有効と考えられる。
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