研究概要 |
昨年度までは、グルココルチコイドの標的遺伝子の探索と、それらのアポトーシスに及ぼす影響を解析してきた。本年度は白血病細胞にグルココルチコイドと同様に、しかし全く異なる経路を介してアポトーシスを誘導するp53の標的遺伝子の機能を、昨年度と同様にRNA干渉と呼ばれる現象を利用して解析した。転写因子であるp53の標的遺伝子は多数報告されているが、それらのうちいずれがアポトーシス誘導において重要な役割を演じているかは不明な点が多い。本年度はp53の標的遺伝子のうち5種類(p53AIP1,BBC3,PMAIP1,BCL2L11,BAX)と、陽性コントロールとしてp53自身の計6遺伝子に対するsmall interference RNA(siRNA)を委託合成し、同じ細胞に同条件下でひとつずつsiRNAを導入し、各遺伝子の発現抑制がアポトーシスに及ぼす影響を解析した。先ずリアルタイムRT-PCR法を用いて、各siRNAが標的とする遺伝子の発現を80%以上抑制することを確認した。p53が野性型であり、放射線照射でアポトーシスが誘導される細胞株を用いて、照射前に各siRNAを導入することにより、アポトーシスにいかなる影響が出るかをフローサイトメトリーで解析した。肺癌由来細胞株A549においては、BBC3とBAXをノックダウンすることで強いアポトーシス抑制が見られたのに対し、胚細胞腫瘍由来細胞株のTera-2ではこれらに加えてPMAIP1のノックダウンでもアポトーシスが抑制された。以上の点から、p53によるアポトーシス誘導を媒介する標的遺伝子は細胞に依存するものの、BBC3とBAXが主要な役割を演じていることが多いと考えられた。
|