研究課題/領域番号 |
15390334
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
伏木 信次 京都府立医科大学, 医学研究科, 教授 (80150572)
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研究分担者 |
伊東 恭子 京都府立医科大学, 医学研究科, 助教授 (80243301)
矢追 毅 京都府立医科大学, 医学研究科, 助手 (40311914)
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キーワード | 内分泌かく乱物質 / ビスフェノールA / 脳神経系発達 / 遺伝子発現 / マイクロアレイ / BrdU / Protein Disulfide Isomerase / 免疫組織化学 |
研究概要 |
目的)本研究では、低用量ビスフェノールAの胎児期曝露による脳形成過程への影響を分子レベルから組織レベルに至るまで解析することによって、その生物影響を解明する。 方法)妊娠マウス(ICR)に胎生0日から連日、皮下注射によってBPA(0μq/kg/day、20μg/kg/day)を投与し、胎生12.5日、14.5日、16.5日、18.5日で胎仔終脳を摘出、total RNAを回収したのち、マウス由来の約3万種の遺伝子断片を対象とするマイクロアレイ解析を実施した。同様に作製した妊娠マウス(ICR)に5-bromo-2'-deoxyuridine (BrdU,12.5mg/kg)を腹腔内単回投与し、1時間後あるいは2-3日後に胎仔脳を摘出、パラフィン包埋切片を作成し免疫組織化学的染色を施行した。一次抗体として、抗Protein Disulfide Isomerase (PDI)抗体(舩江教授より恵与1:500)、抗BrdU抗体(1:10000)などを用いた。 結果並び考察)cDNAマイクロアレイ解析では、検索した3万種の遺伝子の約2%に2倍以上の発現変動が見られ、神経発生、分化に関連する興味ある遺伝子:Numb、そのリガンドであるLnxファミリーなどの発現変動が定量PCRで確認された。免疫組織化学的には、PDIの発現はBPA投与群において、胎生12.5日から胎生16.5日にかけ背側終脳壁の皮質板表層、サブプレート、中間層、海馬CA領域で増強し、皮質板ではPDI免疫染色性のradial patternがより明瞭であった。終脳壁におけるBrdU陽性細胞密度は、BPA投与群において全層(脳室層、中間層、皮質板)で胎生12.5日から胎生14.5日で増加しており、神経前駆細胞の増生、遊走の時期がより胎生早期に移行する傾向が見られた。さらに、中間層におけるTUJ1陽性の投射線維の束形成がより明瞭であった。以上より、胎児へのBPA曝露は、分子レベル、組織レベル双方において正常の脳形成に影響を及ぼすことが示唆された。しかし、大脳皮質形成へのBPA曝露の影響から見る限り、皮質形成早期での変化が中・後期よりも大きく、妊娠早期におけるBPA曝露を回避できれば、その影響を小さくとどめることのできる可能性が示された。
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