1)全層皮膚を用いた経皮HIV感染モデルの作成および同モデルにおける初期感染細胞の同定 本研究において用いられるヒト全層皮膚は、当科における形成外科/皮膚外科領域の手術により得られた不要あるいは余剰な正常皮膚/粘膜部分を、患者本人のインフォームドコンセントを得てから使用された。まずヒト皮膚の脂肪組織を除去した後、ワイヤーブラシにて角質を剥削後、真皮側を下にシャーレ上に置き、HIVを表皮側より皮膚に2時間37度で曝露した。HIV曝露後皮膚をPBSにて洗浄後、メッシュシート上に皮膚を真皮側を下にして4日間培養し、遊走してきた細胞群をフローサイトメトリーにて検討した。HIVに感染したHIVp24陽性細胞はLangerin陽性のランゲルハンス細胞に認められたが、DC-SIGN陽性の真皮内DCには認められなかった。この結果より経皮HIV感染における標的細胞はランゲルハンス細胞であることが示唆された。 2)同モデルにおけるRANTES analogueの有用性の検討 次にこの系において、RANTES analogue (PSC-RANTES)あるいはmannan (c-type lectin inhibitor)をHIV曝露前に添加したところ、HIV曝露後皮膚より遊走した細胞群からアロT細胞へのHIV transmissionは、PSC-RANTESによって完全に抑制されたのに対し、mannanによる有意な感染抑制は観察されなかった。この結果から、経皮HIV感染におけるランゲルハンス細胞からT細胞へのHIV transmissionはCCR5依存性のランゲルハンス細胞自身の感染を介した経路が重要であることが示唆されたと同時に、経皮・経粘膜HIV感染予防薬としてのRANTES analogueの有用性が実証された。尚、これらの結果は2004年米国研究皮膚科学会にて口頭発表予定である。
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