我々は、抗原提示細胞である樹状細胞(DC)へのrTAT-PTD protein導入法によるワクチン療法が新たな抗腫瘍治療として利用できるかを検討した。抗原タンパクにはマウスメラノーマ抗原として広く用されているtyrosinase-related protein 2 (Trp2)をTAT-PTDの有無で2種類作製、使用した。また樹状細胞はマウス骨髄細胞をIn vitroにてGM-CSF+IL-4(10ng/ml)で6日間培養し使用した。最初に我々は、TAT-PTD-Trp2タンパクがDC細胞内へ導入されていることを共焦点レーザー顕微鏡により確認した。次に導入されたrTAT-PTD-Trp2タンパクがDC内でプロセス処理され、抗原ペプチドとしてMHC class I及びclass II上に発現され、かつCD8陽性T細胞ならびにCD4陽性T細胞を活性化することを確認した。次にrTAT-PTD-Trp2を導入したDCをin vivo皮下投与したマウスを解析した結果、強力な抗原特異的CTLの誘導および腫瘍細胞からの拒絶効果が認められた。しかしながらこれらの効果はTAT-PTDを含まないTrp2タンパクでは認められなかった。またrTAT-PTD-Trp2導入DCワクチン療法は、(MHC class I)抗原ペプチド(Trp2_<180-188>)処理したDCと比較した場合、より強力なCTL誘導とメモリー効果及び治療効果が認められた。このようにDCを用いた腫瘍ワクチン療法にTAT-PTD含有腫瘍抗原導入法は有用であると思われる。
|