研究概要 |
Protein transduction domain(PTD)を含むリコンビナント融合タンパク質(rPTD-protein)は、細胞外より迅速かつ効率的に細胞内への導入が可能であるため、この特性を利用して、我々は樹状細胞(DC)へのPTD含有タンパク抗原導入法が、ワクチン療法として利用できることを2種類のマウスモデル(OVA抗原、melanoma Trp2抗原)を使って証明した。この方法で宿主を免疫すると、タンパク抗原がDC内でプロセス処理されMHC class I及びclass II上に効率よく発現することにより、抗原特異的CTLおよびCD4^+helper T細胞の活性化を同時に誘導することが可能となる。当初我々は、TAT-PTDを用いて腫瘍ワクチン療法の効果を検討し、in vivoにおける腫瘍塊の縮小を確認した。 一方、最近TAT-PTD以上に細胞導入効率のよいPTDがいくつか報告された。そこで次に我々は、アミノ酸配列の異なる3種類のPTDをN末に含有するリコンビナントOVA融合タンパク質を作製、精製し、in vitroにおけるDCへの導入効率、プロセス処理された上でのMHC class I, class II上への提示効率、及び抗原特異的CD4+,CD8+ T cell活性化能を比較検討した。その結果、DCに導入した場合、各PTDには導入効率に基づく抗原特異的免疫反応の差異が認められ、またTAT-PTD以上にCD4+,CD8+ T細胞両者を活性化しうるPTD(polyarginine ; R9)が確認された。以上の結果を基にin vivo tumor treatment studyを行ったところ、R9-PTD-OVA-DCで2回免疫した群は、TAT-PTD-OVA-DCと比較し有意な腫瘍縮小効果が認められ、また免疫時にadjuvantであるLPS, OK432を共投与したところ、腫瘍塊は全てのマウスにおいて完全に拒絶された。本法はペプチド療法では期待できないhelper T細胞の活性化を強力に惹起するため、有力なワクチン療法であると考えられ、また臨床応用した場合の有効性も期待できると思われる。
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