本研究はヘミデスモソームをもつ組織から基底膜を単離精製し、ヘミデスモソーム関連の基底膜分子を同定し、基底膜とヘミデスモソームの相互作用を分子レベルで明らかにすることを目的として行った。主な成果は以下のようである。 1 角膜基質から基底膜画分を得る事に成功し、基底膜成分に対する多数のモノクローナル抗体を得た。作製した抗体を用いて、筋上皮細胞は基底膜との接着に上皮型のヘミデスモソームと平滑筋型のアドヘレンス・ジャンクションの2つのタイプの接着装置が同時に機能していることを明らかにした。ラミニンγ2鎖のプロセッシングは基質に組み込まれたラミニン5が基質から効率よく遊離するため必要であることを示唆する結果を得た。 2 BP180/XVII型コラーゲン分子は120kDの細胞外部分が切断されるが、この切断は細胞質内膜系ではなく、細胞表面膜上で起こっていることを証明した。切断酵素はマトリックスメタロプロテアーゼの一種であること、BP180分子の切断がヘミデスモソームの解離に関わっていることが示唆された。 3 単層上皮組織の基底膜成分を調べた結果、腸上皮細胞の基底膜部はプレクチンとインテグリンα6β4からなるII型ヘミデスモソームの成分に加え、I型ヘミデスモソームに存在するBP180が存在しており、I型とII型の中間型を示した。一方、尿細管上皮細胞の基底膜部ではインテグリンα6β4は確認されたがプレクチンは検出されず、新しい型の接着構造の存在が示唆された。 4 中間径線維タンパク質シネミンが筋上皮細胞を含めた4種の筋細胞すべてに発現していること、デスミンやケラチン等の中間径線維と相互作用すること等を示した。共同研究により、肝臓の星細胞ではシネミンが中間径線維とアクチン系の細胞・基質間接着装置であるフォーカルアドヘージョンを繋いでいることを報告した。
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