研究概要 |
表皮の増殖・分化は多くの細胞成長因子により制御されており、最も重要なものとしてはEGFファミリーが知られている。表皮角化細胞はTGF-α,HB-EGF, amphiregulin(AR), epiregulin(ER)を産生することが知られている。しかし、なぜ、4種類ものEGF family細胞成長因子を産生するのかは、表皮の機能の研究における大きな謎であった。即ち、これら4種の細胞成長因子が特異的な作用を持つのか、あるいは単に相補的に作用するのかについては検討がなされていない。本研究では表皮EGFファミリーの特異的機能を解析する目的でsiRNAトランスジェニックマウスの作製を試みたが、siRNAの作製は終了したが、トランスジェニックマウス作製には至らなかった。そこで、HB-EGFの表皮特異的ノックアウトマウスを用いて、HB-EGFの機能を解析した。Heparin-binding EGF-like growth factor(HB-EGF)はEGFファミリーに属する細胞成長因子であり、表皮角化細胞に対するオートクリン細胞成長因子である。創傷治癒は様々な因子が関与していると考えられているが、EGFファミリーに関しては明らかにされていない。そこで、皮膚創傷治癒過程におけるHB-EGFの機能について検討した。培養ヒト表皮角化細胞を用いたin vitro wound healingモデルではHB-EGFの中和抗体を用いると角化細胞の遊走が阻害され、HB-EGF添加により遊走が促進された。また、ScrapingによりHB-EGFのmRNAはEGFファミリーのなかで、速やかにかつ顕著に誘導された。In vivoにおけるHB-EGFの機能を検討するためにHB-EGFのノックアウトマウスを作製し、wound healing assayを施行したところ、HB-EGFノックアウトマウスでは創傷治癒の遅延が認められた。 以上の結果より、皮膚創傷治癒においてはHB-EGFが重要な役割を果たしており、これら4種の細胞成長因子が特異的な作用を持つことが示唆された。
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