研究概要 |
正常人末梢血リンパ球よりナイーヴCD8^+T細胞分画を得て、これをIL-12あるいは、IL-4の存在下で、抗CD3抗体による刺激を繰り返すことによりTc1、Tc2に分化させ、その過程で発現していく様々な分子についての検討を加えた。 1.まず昨年に引き続き、上記の分化の過程でCD8^+T細胞に発現してくるE-selectin ligand (ESL), CCR-4,CLAなどをフローサイトメトリーを用いた蛋白レベルの解析を行った。Tc1においてはESL, CLAともに恒常的に強く発現が認められたが、Tc2では両者とも一過性に認められるのみであった。一方、CCR-4の発現はTc2では恒常的に認められるのに対し、Tc1では一過性であった。ESL^+, CCR-4^+phenotypeはTc1,Tc2を各々逆のサイトカイン環境(すなわちTc1をIL-4、Tc2をIL-12)で刺激した際に強く発現が誘導された。 2.ESL, CLA発現を抑制しているフコース転換酵素VII(FucT-VII)の他にFucT-IVの発現についても、我々の樹立したモノクローナル抗体を用いた酵素組織化学により検討を行った。Tc1ではFucT-VIIだけでなく、FucT-IVの発現も恒常的に認められたのに対し、Tc2ではFucT-IVの発現を恒常的に認めたものの、FucT-VIIの発現は一過性であった。 3.Tc1,Tc2の細胞表面に発現しているESLについての形態学的検討を行った。Tc1ではESLはclusTcrを形成し膜全体に高密度で認めたのに対し、Tc2における発現はdot状で低密度で分布していた。前者は低濃度のE-selectinとも結合したが、後者は高濃度のE-selectinとのみ結合した。以上の結果から、Tc1はE-selectinの発現の低い定常状態の皮膚へもホーミング出来るのに対し、後者はE-selectinの発現が高まった時のみ皮膚にホーミングすると考えられた。
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