研究概要 |
本研究では、皮膚にホーミングするCD8^+T細胞の分化過程におけるフコース転移酵素fucosyltrans-ferase (FucT)IV, VIIの相互制御機構について明らかにしようと考えた。まず各々のトランスフェクタントを用いて、Fuc T-IVにより生成されるEセレクチン・リガンド(ESL)がFuc T-VIIにより生成されるものとは異なり、CLA発現を伴わない接着能の弱いESLであるのに対し、後者はCLA発現を伴った接着能の強いESLを生成することを明らかにした。さらにナイーブCD8^+T細胞を様々な培養条件で刺激し、メモリーT細胞へ分化させ、その過程で発現しているFuc T-IV, VII, ESL, CLAについて検討した。その結果、IL-12を含むresting cultureへtransferした時に、Fuc T-IVの発現が低下し、それとともにESL^+CLA^-からESL^<++>CLA^+へのシフトが起こった。それに対し、IL-4を含むresting cultureへtransfeした時には、Fuc T-VII発現が低下し、ESL^<++>CLA^+へのシフトは起こらなかった。この結果はFuc T-IVとFuc T-VIIは同一基質(Nアセチルラクトサミン)を使うため、Fuc T-IVの発現が亢進している状態では、Fuc T-VII依存性のESLエピトープの細胞表面への発現は抑制されるのに対し、Fuc T-IVの発現が低下する状態では、Fuc T-VII依存性のエピトープ(ESL^<++>CLA^+)の細胞表面への発現が誘導されることを示している。 以上の結果から、T細胞の分化の程度、活性化段階に応じたFuc T-IVとFuc T-VIIのバランスが、CD8T細胞の分化過程に重要な役割をしていることが明らかになった。
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