研究概要 |
ヒト脳の感覚記憶に符号化され記憶された(神経的に表現された)聴覚情景の中に流れる時間は、現実世界の時間の流れとは異なっている可能性がある。ヒトには音の変化を自動的に検出するメカニズムが備わっているが、その基盤にある感覚記憶は一次聴覚野近傍に発生源を持つMMN反応に反映される事が知られている。これまでのMMN研究から、繰り返し音の様々な要素の膨大な情報が、時間統合機構によって約160-170msの時間方向の神経表現として、感覚記憶に符号化されていることがわかってきた。本研究では、脳皮質に神経的に表現された聴覚世界の中で、時間の流れはどのように表現されているのかを、全頭型脳磁図を使用して、健常者において神経的に表現された「時間」の様態を詳細に捉えるとともに、感覚記憶の障害が示唆されている統合失調症で関連性を調査した。現実世界での時間の流れと感覚記憶に維持された聴覚情景の中での時間の流れを、複雑音に組み込まれた欠落情報をプローブとして用いてデータ収集を行った。複雑音で得られた磁気MMNに反映されるような感覚記憶では時間圧縮現象が認められ、時間的前部と後部の時間情報に違いがあり、また統合失調症患者においても時間統合機能が障害されていることを示す結果を得た。そしてその研究の一部をすでに報告してきた(2nd SICPB2006,IPEG2006,8th IEPS,第36回日本臨床神経生理学会学術大会など)。しかし、重要部分を含む結果の全体の論文公表は、2007年度末になる予定である。
|