研究概要 |
異常音の出現を自動的に探知する防御的な聴覚機構をヒトは発達させてきた。このシステムは、聴覚皮質のミスマッチ陰性電位(MMN)を研究することによって明らかにされた。MMNに反映されるような変化検出システムは、変化音を検出するために聴覚環境の以前の状態を保存する必要がある。この記憶痕跡説によれば、MMNは感覚記憶に保持された頻回音の神経痕跡と逸脱音との比較過程によって生成される。この様な事象の記憶保存は、近接して提示された音を単一の情報ユニットに統合する時間窓統合という脳機能に関連している。我々は、時間統合の理論に基づいて、記憶痕跡が160-170msの時間関数情報として表現されることを見出した(1997,1998,1999,&2001)。 本研究では、時間統合窓が反映する感覚記憶内の逸脱検出感度の変化を詳細に明らかにすると共に(2004)、その内部の時間の流れが圧縮されている変化をも示してきた(2005)。さらにMMNが、ガンマ帯域脳反応とは異なる認知的神経基盤を有することも示した(2005)。一方で、感覚記憶痕跡の発展の様態について報告した(2006)。また統合失調症患者における前頭部注意転換メカニズムの賦活の障害を明らかにし(2004)、統合失調症患者における聴覚性感覚記憶内の時間の流れについて検討を行った。その結果、MMNの基盤にある感覚記憶内部に時間機能の障害が存在することが示唆された。一部の結果について発表してきた(2^<nd> SICPB2006,IPEG2006,8^<th> IEPS,MMN2003、第36回日本臨床神経生理学会学術大会など)。しかし、全体の論文公表は、2007年度末になる予定である。
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