統合失調症の進行性増悪過程に関する脳形態および脳機能画像を用いた前方視研究

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15390348
• 研究種目: 基盤研究(B)
• 研究機関: 日本医科大学
• 研究代表者: 大久保 善朗 日本医科大学, 大学院・医学研究科, 教授 (20213663)
• 研究分担者: 川良 徳弘 東京医科歯科大学, 大学院・保健衛生学研究科, 助手 (50234141) ; 鈴木 秀典 日本医科大学, 大学院・医学研究科, 教授 (30221328) ; 須原 哲也 独立行政法人放射線医学総合研究所, 脳機能イメージング研究開発推進室, 特別上席研究員 (90216490)
• キーワード: 統合失調症 / PET / MRI・VBM解析 / fMRI / 神経栄養因子

研究概要

本研究は脳形態および脳機能画像を用いた前方視研究によって、統合失調症における進行性増悪過程の病態を解明しようとするものである。まず以下のMRI研究研究を行った。
近年、統合失調症患者において縦断的な脳の形態変化を調べた研究が報告されるようになった。しかしながら、これまでの報告は縦断的追跡の困難さから、比較的少数例を対象に少数の脳部位の解析にとどまることが多かった。そこで、多数例を対象に年代間の脳形態の差異を統合失調症群と健康対照群に分けて比較することによって、統合失調症の進行性の脳形態変化を検討した。対象は、統合失調症患者70名(平均年齢44.2±10.2歳、21歳〜59歳)として健常者80名(平均年齢45.4±8.2歳、22歳〜58歳)とした。MRI撮像はGE社製1.5TeslaMRI装置を用い、得られたT1強調画像を1voxel、1mm×1mm×1mmの三次元データに再構成した。解析はSPM99を用い灰白質体積のVoxel based morphometryを行った。対照群内での年代別比較では年齢の上昇に伴い、左側頭葉の一部さらに両側側頭葉、後頭葉、帯状回で灰白質の体積減少を認めた。これは健常者の加齢に伴う脳形態の変化と考えられた。また、患者群内での年代別比較では年齢の上昇に伴い右海馬、側頭葉、大脳基底核で灰白質の体積減少を認めた。これは、対照群とは異なる、すなわち加齢とは異なる疾患特異的な進行性の変化の存在を示唆された。
このほか血清中の脳由来の神経栄養因子(BDNF ; brain-derived neurotrophic factor)の測定を計画し、患者および健康対象のデータ収集を行った。

研究成果

• [文献書誌] Halldin C, Erixon-Lindroth N, Pauli S, Chou YH, Okubo Y, et al.: "[11C]PE21:a highly selective radioligand for PET examination of the dopamine transporter in monkey and human brain"Eur J Nucl Med Mol Imaging. 30. 1220-1230 (2003)
• [文献書誌] Oda K, Okubo Y, Ishida R, Murata Y, Matsushima E, Ota K, Matsuda T, Ichimiya T, Suhara T et al.: "Regional cerebral blood flow in depressed patients with MRI white matter hyperintensity"Biol Psychiat. 53(2). 150-156 (2003)
• [文献書誌] Yasuno F, Suhara T, Nakayama T, Ichimiya T, Okubo Y et al.: "Inhibitory role of hippocampal 5-HT1A receptors on human explicit memory"Am J Psychiatry. 160(2). 334-340 (2003)
• [文献書誌] Hossain AKM Moinul, Murata Y, Zhang L, Taura S, Saitoh Y, Mizusawa H, Oda K, Matsushima E, Okubo Y: "Brain perfusion SPECT in patients with corticobasal degeneration : Analysis using statistical parametric mapping"Movement Disorder. 18. 697-703 (2003)
• [文献書誌] Suhara T., Takano A., Sudo Y., Ichimiya T., Inoue M., Yasuno F., Ikoma Y., Okubo Y: "High levels of serotonin transporter occupancy with low-dose clomipramine in comparative occupancy study with fluvoxamine using positron emission tomography"Arch Gen Psych. 60. 386-391 (2003)
• [文献書誌] Shioe K., Ichimiya T, Suhara T., Takano A., Sudo Y., Yasuno F., Hirano M., Shinohara M., Kagami M., Okubo Y.: "No association between genotype of the promotor region of serotonin transporter gene and serotonin transporter binding in human brain measured by PET"Synapse. 48. 184-188 (2003)