研究概要 |
われわれは,非定型精神病の客観的な診断法の確立をめざし、精神病理学的な研究とともに、CT,SPECT,MRI,NIRSなどを用いた脳の画像診断的検査や、探索眼球運動や事象関連電位などの精神生理学的検査を施行して、非定型精神病が定型の精神分裂病(統合失調症)とは異なる生物学的基盤を有するものであることを示してきた。 まず、精神病理学的な研究では、幻聴体験の詳細なデータを統計学的に解析し、分裂病性幻聴と非分裂病性精神病性幻聴との症候学的相違を検討した。そして、データ・マイニングの手法によって、分裂病性幻聴が自我体験型や自我障害型を特徴とし、非分裂病性精神病性幻聴は対象体験型や夢幻体験型に分類され、満田の言う非定型精神病の概念に類似する結果を示すことが出来た。 非定型精神病のSPECTを用いた研究は、症例報告として行っている(SPECTを用いた精神疾患の研究:関西脳SPECT研究会、H18.3.4、大阪)が、なお多数例の発表には至っていない。 NIRSによる研究は、探索眼球運動検査と組み合わせて行っており、MRI検査結果とあわせて検討している。現在、患者群の42名、正常対照群の18名が検査を終了している。しかし、暗算、言語性、非言語性、注意・抑制課題によるデータ処理に時間がかかり、また再検査を要とする症例もあり、論文にするには至っていない。ただ、分裂病性精神病と正常対照群とを比較した予備的な検討は、非言語性課題のレイヴン色彩マトリックス検査を用いたものであるが、探索眼球運動に関する検討会(H18.1.13、東京)で報告した。 NIRS研究のデータ収集は順調に進んでいる。今年度は、生物学的精神医学会や、日本精神科診断学会などの学会で、解析結果を発表する予定であり、最終的な論文も早急にまとめて報告したいと考えている。
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