放射線により生じるDNA2本鎖切断は非相同的末端結合機構と相同的組換えにより修復される。S化1本鎖DNAとその構造的類似物質suraminが非相同的末端結合機構の最初のステップであるDNA依存性プロテインキナーゼ(DNA-PK)活性を阻害し、放射線によるDNA2重鎖切断の修復を阻害することを報告した。本研究では、suraminが放射線感受性に与える影響とその機序を検討し、臨床適応可能なDNA2本鎖切断修復阻害剤・放射線増感剤であるかどうか検討した。suraminは、培養細胞の放射線感受性を高めたがUV感受性には影響を与えなかった。また、DNA-PKにmutationを持つscidマウス由来の細胞の放射線感受性には影響を与えなかった。これらのことから、suraminはDNA-PK活性を抑制することにより細胞の放射線感受性を高めることが明らかとなった。さらにsuraminがepidermal growth factor (EGF)受容体の活性に及ぼす影響を検討した結果、suraminはEGF受容体を一過性に活性化し、その後不活性化することが明らかとなった。EGF受容体の一過性の活性化はSrc阻害剤PP2により抑制されたが、GPCR阻害剤によっては抑制されなかった。これらのことから、suraminはDNA-PK活性化やEGF受容体の活性に影響を与え、それにより放射線増感する薬剤であることが明らかとなった。放射線増感によるsuraminの濃度はsuraminを抗癌剤として投与した場合の血中濃度とほぼ等しいため、臨床適応可能な放射線増感剤になりうることが明らかとなった。
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