研究概要 |
本研究では,低酸素環境下に生じるフリーラジカルが,発癌・悪性化を促進させる要因となることを検討した. この目的を達成するために本研究では,マウス不死化線維芽細胞(BALB3T3細胞,NIH3T3細胞),マウス良性線維肉腫(QR-32細胞),ラット不死化小腸上皮(IEC6細胞)およびヒト大腸腺腫細胞(FPCK-1-1細胞)を用いて,低酸素インキュベーター(O_2濃度1%)と通常酸素分圧インキュベーター(O_2濃度20%)間を約12時間毎に交互に交置培養を継続した. その結果,1)低酸素および通常酸素分圧インキュベーター間を交置培養することで,細胞内にフリーラジカルが生じることを特異的蛍光プローブを用いることで証明した.また,低酸素環境によって細胞内あるいは生体内に生じる活性酸化窒素・フリーラジカルが発癌・悪性化の要因となることを誌上発表した(Am J Pathol, Oncogene, Redox Report, Br J Cancer).2)交置培養1週間を1クールとして計20クールの連続処理を行った.5クール毎に処理細胞を回収し,ヌードマウス皮下に移植したところ,BALB3T3細胞およびNIH3T3細胞が血管腫などを形成し致死増殖した.しかし,現在までのところ,上皮系細胞由来の株化細胞の癌化は観察していない. 現在,上述の細胞株に加え,新規の細胞株10T1/2細胞およびBALB3T3 clone A31細胞およびNIH3T3-3-4細胞を理化学研究所バイオリソースセンターより購入し,当該研究の再現性の証明にあてるとともに,当初の計画に従い,フリーラジカルスカベンジャーの添加培養による発癌・悪性化の影響に関しても平行して進めている.
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